コラム

「レザー」&「シルバー」コラム

「レザー」といえば遠い昔より人類が利用していた身近な素材。現代においてはファッションを始め、インテリア製品等、様々なシーンで様々な種類の革が使われています。

「シルバー」といえば、いわゆる「貴金属」と呼ばれる一つ。ジュエリーの素材としては昔からオーソドックスなモノでしたが、最近ではいわゆる「シルバーアクセ」を身に着けている男性も多く見られ、メンズアクセサリーの定番と言えるほど浸透しています。

そんな身近な素材である「レザー」と「シルバー」ですが、より長く、より良いコンディションで使用していただくために、こちらのページでは素材の特性・扱い方・手入れの方法等について、少々ご説明させていただきたいと思います。


■ Index ■

「レザー」コラム

「シルバー」コラム

皮革素材について

アッシュの製品について

革製品の注意とメンテナンス

シルバーについて

金属アレルギー

シルバー製品のメンテナンス


皮革素材について

●「革」と「皮」

「革」製品に使われている革は、もともとは動物の「皮」です。
それでは、この「革」と「皮」の違いは一体何か?ということですが、「革」は「皮」に「なめし」という工程を施したものを言います。

「なめし」の工程を簡単に説明すると、皮を植物から抽出した「タンニン」や、薬品である「クローム化合物」に漬け込むことで、皮を腐敗させずに加工できるようにする作業のことです。ちなみにこの作業を行う職人を「タンナー」と呼びます。
こうすることによって、真皮層のコラーゲンが安定し、「革」として利用可能な素材となります。

「タンニン」なめしと「クローム」なめしの違い

「なめし」の種類には大きく分けて、「タンニンなめし」と「クロームなめし」の二つがあります。

まずタンニンなめしでなめされた革ですが、これはよく「ヌメ革」と呼ばれます。アッシュで主に使用しているサドルレザー等もこの手法によってなめされた革になります。
このタンニンなめしの革の特徴としては、素材の丈夫さと革本来の風合いを残すという点が挙げられます。
素材の丈夫さとは、素材そのものの堅牢さを指すもので、むしろ表面にはキズがつきやすい革と言えます。ですが、このキズはむしろ革の味わいを増すという意味で、革製品独特の楽しみ方の一つだと思います。
革の風合いを残すという点ですが、経年変化による革の変色等が特徴の一つです。
日光による日焼けや、手の脂が染み込むことにより、ナチュラルのヌメ革はどんどん「アメ色」に変わっていきます。
染色により色づけした革も、使い込むほどに艶が増していきます。
更には革の元々含んでいる脂分が表に染み出し、ツヤのある皮膜をつくることによって、革自体を保護する働きもしてくれます。
この変化が上質な革製品を使う上では、たまらない魅力となります。

こうした堅牢な素材であるヌメ革は手入れによっては、何年・何十年と長く使用することも可能です。
そうすることにより、自分が革を育てているような感覚を楽しむことが出来ます。

これに対してクロームなめしでなめされた革は、タンニンなめしに比べなめし工程が短く済むため製造コストが低く、現在では主流のなめし方法となっています。
クロームなめしでなめされた革は、ヌメ革に比べ表面にキズが付きにくく、またやわらかく弾力に富むなどのヌメ革と違った長所がありますが、日光等に対しても安定しているため、使い込んだ味わいなどはヌメ革ほどは楽しめないかもしれません。

これら異なる手法でなめされた革はどちらが良い悪いというわけでなく、それぞれの革の特性を生かして、その用途に合った革素材を使用するということになります。  

経年変化

※右が新品状態のもの。
左が使用して半年ぐらい経過したものです。

新しい革の色も綺麗な色ですが、オイルを塗りこみながら使い込むと左のように艶が出てきます。
手触りも良く、革も柔らかく馴染んできて使い勝手も良くなります。

アッシュの製品について

良質の革素材を使っても、その「製法」が悪ければ良い革製品は生まれません。
そこで末長くアッシュの製品を楽しんでいただくために、制作上こだわっている点をご紹介させていただきます。

革について

アッシュの革製品で使用している皮革は、サドルレザーを中心とした、タンニンなめしによる牛革が主です。この他にも、発色のよいカラーに染色された牛革等も、デザインや用途に応じて使用しています。どれも革製品の風合いを楽しめる素材ですので、安心して使用していただけます。
また、リザード(トカゲ)やダイヤモンドパイソン(ニシキヘビ)、スティングレー(アカエイ)等のいわゆる「エキゾチックレザー」と呼ばれる革も多く使用しています。
全ては天然素材であり、合成皮革などは使用しておりません。

一部では動物愛護の観点から革製品に対しての非難もあるようですが、基本的に牛革等は食肉用の牛の副産物として利用されているのが現状です。
また、野生生物の皮革については、「サステイナブル・ユース」(持続可能な利用)という考え方に基づき、有効利用されています。
これは野生生物のある程度の利用を認めることで、その産出国や地域住民の経済的な利益を確保し、それによって長期的な自然環境の保護を目的とする考え方です。
いずれにしても、革製品を使用する立場としては、その生き物たちに対する感謝の気持ちは忘れずにいたいものです。
  

レザーバリエーション

※基本的に革は、半裁という1枚あたり牛1頭の半分の大きさで取引されます。
全ての部分を使えるわけでなく、ベリーと呼ばれるおなかの部分などはフカフカとしてて張りが無く、革製品の表革としては使用することができません。

ダイヤモンドパイソン / スティングレイ

※左から、ダイヤモンドパイソン(ニシキヘビ)、エイ(連石)、スティングレイ(アカエイ)の革です。
ダイヤモンドパイソンは3メートルから4メートルもの長さがあります。
右のスティングレイは40センチ弱くらいです。

エキゾチックレザーはそのウロコ模様自体が美しく、非常に高級感があります。

●couture sellier(クチュールセリエ)と呼ばれる、100%手縫による縫製

アッシュではレザー製品すべての縫製を、「クチュールセリエ」と呼ばれる手法で手縫いで仕上げています。
これは、古くはヨーロッパ等で馬具職人が鞍などを作る時から使われている縫製方法です。

まずミシン縫いと最も異なることは、その丈夫さです。
二本の糸を交差させて縫い上げる方法なので、一箇所切れてしまったからといってほつれてくるといったことは一切ありません。
(ミシン縫いが特別弱いという訳ではないのですが、一針ずつ丁寧に施された縫製は見た目の表情にも異なります。)

また、製品の部位によってテンションや縫い幅を変えながら縫製を行うなど、きめ細やかな縫製ができることもメリットの一つです。
革を長く楽しんでいただくためには、欠かせない手法です。

●シニューとロウ引きした麻糸

縫製では主に「シニュー」という繊維が束になったような糸を使用しています。
昔本来のシニューは、鹿などの腱をよって糸にしていたものだと言われます。
これを場所によって3つの太さで使い分け使用しています。
このシニューは手縫いでしか使えない糸で、強度的にもかなり優れており、太さも縦に裂いて使い分けができるので手縫いならではのキメの細かい縫製には最適と言えます。
また、縫製後の仕上がりも革に食い込み、非常に美しいステッチラインとなります。

また麻糸にロウ引きしたモノも使用しています。
こちらはデザイン上での理由など、染色してカラーステッチ用として使用する場合に多く使用しています。
麻糸のステッチラインも味わいがあり、デザインのアクセントになります。
ロウを塗りこんだ麻糸もかなり丈夫ですので、シニューと比べても強度はまったく問題はありません。

 

シニュー / 麻糸

※左がシニュー。縦に裂いて使い分けることができます。

右の3つはロウ引き済みの麻糸です。こちらもかなり丈夫な糸です。
その下にあるのがロウです。
これで麻糸をしごいて、ロウをすり込みます。こうすることで耐久性がアップするとともに、糸の毛羽立ちの防止にもなります。

●手染めによる染色

アッシュの革製品の色づけは、染料を使用し手染めで染色しています。
このため、新品状態からは多少の色落ちがありますが、使い込むことによって艶が増し、より味のある色合いに変化していきます。

また色味を自由に調整することができることもメリットの一つです。
これを活かし、アッシュの商品のカラーリングは、寒色暖色とも深めの味わいのある色味に仕上げています。
ヌメ革本来の質感を消すことなく、カラーリングを楽しむためにはこの手法も欠かすことは出来ません。



他にも様々な拘りがありますが、実際手に取って感じていただければと思います。

革製品の注意とメンテナンス

革のお手入れ方法と注意事項です。これによって革の寿命・味の出方が大きく変わってきます。

革の大敵は水と湿気

革の最大の弱点は水や湿気です。
ヌメ革が濡れてしまうと脂分が抜けてしまったり、シミになったりしてしまいます。
こうした場合、以下のようにして対処して下さい。

@濡れた部分の水分をキレイに拭き取る。(強く擦らない)
また、ちょっとしたシミの場合は、ぬるま湯に浸した布を軽く絞り全体を湿らせる。
A直射日光に当てず、日陰干しでゆっくり湿気を抜く。
B必要に応じてオイル等を塗りこむ。

この際の注意としては、ドライヤー等を使って急に乾かそうとしないことです。

汚れ

表面の汚れについては、柔らかい布で乾拭きするか、革用消しゴムで軽く擦るかすれば大抵目立たなくなります。
くれぐれも気にしすぎて擦りすぎないことです。

カビ

カビが生えた場合は革の内部繊維まで入り込んでしまっていることがほとんどなので、完全に除去することはかなり困難です。
こうならないための予防が一番大切で、湿度の高い環境、汚れの付着等に気をつけていればそう神経質になる必要はありません。通常に使用し、お手入れを定期的にしていれば大丈夫です。

●サドルレザーについて

ナチュラルのサドルレザーについては使用前に日光浴させることをお勧めします。
日光浴させる前にオイルを塗り込むと、より効果的です。こうすることで革の中の脂分と水分が表面に染み出し、表面に皮膜を作り、汚れや水分から革を守ります。また革の味わいも増します。
夏の日差しで3〜5日程度、冬の日差しで一週間〜10日程度が目安です。(あまり濃い色にしたくない方はこの限りではありません。)

通常のメンテナンス

革のお手入れ方法としては、こまめに汚れを落とし、革が乾いてきたと感じた場合にはオイルを塗って下さい。
市販の革用のミンクオイルやクリームで大丈夫です。
ただ全体に塗る前に目立たないところで試してからの方が無難です。
さらに一度に多量に塗り込むと、シミやムラの原因となりますのでご注意下さい。

以上が革の注意点とメンテナンス方法ですが、あまり神経質にならなくとも普通に使って、時々にオイルを塗ってあげれば大丈夫です。
使わずに汚れたまま放置、というのが革製品には一番ダメージを与えてしまいます。


シルバーについて

シルバーといえば昔から金とならんで商取引などにも使われたりする、比較的高価な金属です。
金貨・銀貨、金メダルに銀メダルetc・・・
歴史的には紀元前4000年頃から知られ、宗教的にも重んじられる金属素材として、世界各地で様々な銀にまつわる言い伝え等があります。
例えばヨーロッパのある地方では、赤ちゃんの誕生祝いには銀のスプーンをプレゼントしたりします。これは一生食べ物に困らないという意味合いから行われる風習だそうです。
また銀の装飾品や武器などは魔術的な効果があるというお話もあります。

925や950等

ジュエリーショップやアクセサリーショップ等に行くと、よくシルバー925とか950という言葉を聞くと思います。これは銀の純度を表します。シルバーは純度を千分率で表します。
銀は金属だから硬そうというイメージがあるかもしれませんが、実はとても柔らかく、変形しやすい金属です。ですから、主に「銅」を混ぜて合金化することによって強度を高めさせているのです。
例えば950だと銀が95%に銅が5%含まれています。

ちなみに日本では800、900、925、950、1000の「5品位制」となっていて、800以上が貴金属と認められています。
1000は純銀で、専門用語では「サラ」と呼ばれます。
950は「五分落ち」、925は「スターリングシルバー」とも呼ばれ、950は日本では手作りの素材として多く使われています。
925は流動性に優れ、キャスト(鋳造という意味で、ロストワックスという現在のシルバーアクセサリー主流の製造方法)に多く使用されています。

特に純度が高いから高価ということではなく、製品の製造方法やデザイン等によって特性に合ったものを使用します。

シルバーが黒ずむ

「汗をかいたままずっとシルバーの製品を着けていた」「温泉にリングつけたまま入た」等の時にシルバー製品が黒ずんだ経験はないでしょうか?
そうでなくても、使い続けているシルバー製品は次第に光沢が無くなり、更には黒く変色したりします。

これは空気中の硫化水素や水分中のオゾン・二酸化硫黄等と反応して「硫化」することが原因です。
よく「酸化」と間違われるのですが、銀は酸化しない性質を持っているので酸化とは異なります。

ただ黒くなってもシルバー用の磨き布で磨いたり、専用の洗浄液などで洗えば落ちるので大丈夫です。
                                             (詳しくはシルバーのメンテナンスにて)

金属アレルギー

特に汗をかく時期などに、ピアスをしてて耳に違和感を感じたり、ネックレスをしていて首筋がかゆくなってきた等という時は要注意です。

金属アレルギーのパッチテスト

金属のアクセサリーをしていたら肌が荒れた経験がある方は金属アレルギーの恐れがあります。
その場合、一度医療機関で検査してもらう方良いかも知れません。パッチテストという検査でどの金属に反応するか調べてもらえます。

●金属アレルギーが起こる理由 

金属アレルギーとは、普段着けているアクセサリーや触っている金属の中にアレルギー性の金属があると、皮膚炎を起こしてしまう症状をいいます。これは主に

・ニッケルやコバルト等、アレルギーを起こしやすい金属を身に着けている
・金属に触れることが多い
・汗をかきやすい
・角質が薄い

といった条件の中で、その人の体質や環境等の様々な要因が組み合わさることで引き起こされます。

チタン

プラチナ

ニッケル

 

亜鉛

コバルト

 

マンガン

クロム

←アレルギーを起こしづらい

アレルギーを起こしやすい→

最近でも粗悪な安価なアクセサリー等にニッケルなどが含まれている場合がありますので、十分お気をつけ下さい。

■シルバー製品のメンテナンス

●日常のメンテナンス

ちょっと汚れてきたと思ったら、柔らかい布で優しく拭いてください。汗をかいた時などは小まめに拭くことをオススメします。
なお「汚れがひどくなった」「黒ずんできた」という場合は次のような方法があります。

・シルバー用の磨き布や洗浄液、磨き粉等を使う
これはアクセサリーショップやホームセンター等でも手に入ります。
研磨剤やワックスが含まれているので、あまり擦りすぎるのは厳禁です。

・歯磨き粉を使う
これも効果的です。
歯磨き粉の研磨剤がキレイに黒ずみを落としてくれます。
ただこれも擦りすぎには注意です。

・重曹(炭酸水素ナトリウム)
これを使って手で擦るのも良い方法です。薬屋さんやスーパーで売っています。
制作にも酸洗いという工程の後使ったりします。
(重曹はアルカリ性なので、汗をかいた後に重曹で洗うといいかもしれません。)

手軽な磨き方はいろいろありますが、いぶし仕上げの製品は磨きすぎるといぶしが取れることもあるのでご注意ください。

保管方法

シルバー製品を保管する場合には、ジップ付きのポリ袋に入れることをオススメします。
外した後に柔らかい布などで軽く汗や汚れを拭き取り、袋に入れ空気を抜いてジップをする。
これだけで大分硫化を防ぐことが出来ます。

以上のように、良いコンディションを保つためにはシルバーは結構手入れが必要な素材です。
反面、使い込んだ味わい・風合いを楽しめる素材とも言えます。
金やプラチナ等の貴金属類は変化しない美しさがありますが、銀という変化しやすい貴金属は、使い込んだ分だけ自分だけの物となる味わいを感じさせてくれます。
そういう意味ではあまり神経質にならず、適度なケアでを行い、革やジーンズの様に自分に馴染ませるような気持ちで気軽に楽しんでいただくのもオススメです。


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